20年ほど前、私はとあるアパレルメーカーで働いていて、まだ学生だった海太郎さんに出会いました。その時の私は「段ボールに埋れていた」と、あれから20年後の海太郎さんが笑いながらおっしゃいました。昨年、海太郎さんの新しいアルバムを聴いていると、傘の絵を描いてほしいとのお話が届き、イチファンでもある私は、これはご褒美ではないかしらと胸が高鳴りました。
傘の絵柄を描くときは大抵音楽が必要で、偏っているが幅は広く、何か見えないお供え物のように、力を貸して欲しいという気持ちもあるし、聞いている楽曲が操ってくれる感じがあります。なるだけ考えない、意図しない、作為を持たせないように努めているけれど、その手前までは、描くことや描く対象、イメージなんかについて考えたり調べたりします。
世界で一番美しい本、時祷書、ベリー候。海太郎さんを通して広がるものがどんどん広がり、興味が湧いて、海太郎さんがコラムで書いていたガストン・バシュラールの本を読み出したもの、1行2行で、立ち止まり、進めない。読めそうなところを開いてみても、文字ばかりが立って、頭に入らない。そうしているうちに描く作業から遠ざかってしまって、それでも無理矢理に読み進めてみる。昔に生きていたこの人、今はもう身体はないけど、思考が言葉で残ってる。す、すごい、、、。音楽もそう。身体はないけど、音が譜面で残ってる。す、すごい、、、。眺めていると少し怖さも感じてしまう時祷書の絵。季節の移ろいや煌びやかで優雅な世界に、寂しさ、自然の偉大さ。
1週間くらい経って2枚の絵が完成しました。海太郎さんからの提案で絵の中にフランス語で月名を半年づつ入れて春夏と秋冬の傘になりました。実は、海太郎さんのサインも入っています。柄に隠れているので探してみてください。そしてアルバムの1曲目と14曲目のタイトルが傘の名前になりました。
Une vieille mélodie que quelqu'un m’a donné 遠い昔に教わった歌
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Le presque-rien inoubliable 忘れがたき、ささやかなもの
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Photo: Keitarrow(Machinokid Art)